小さな灯台 · 第一夜
残された灯り
潮の香り。温かいお茶。水辺の、小さな光。
海辺の灯台で、お茶を飲みながら夜を迎える物語です。大人のための、静かな寝る前のひとときに。
声で聞く物語。
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物語の全文
細い小道の先に、海に寄り添う小さな灯台がありました。扉は、長く使った青いカップと同じ色。丸い石が扉を少し開けたまま支え、夕方の風がゆっくり部屋に入ってきます。
台所にはやかんが置かれていました。椅子の背には、きれいに畳まれた毛布。窓の向こうでは、昼の最後の銀色が海に残り、細いリボンのように伸びていました。急いで港に向かう船も、すぐに片づけなければならない仕事もありません。
灯台守はお茶を注ぎ、カップを持って階段を上がりました。一段ごとに、木が聞き慣れた小さな音を立てます。速く歩く理由はありません。灯りはいつもの速さで回ります。昨日も、その前の夜も、そうだったように。
いちばん上の窓辺に、カップを置きました。ガラスの外に小さな蛾がとまっています。薄い羽は、折りたたんだ紙のよう。下では波が石に触れて、また戻っていきます。誰かが大切な本のページを、そっとめくるような音でした。
毛布を肩にかけると、お茶から香ばしい穀物の匂いがしました。湾の向こうで窓がひとつ光り、少しして、もうひとつ光ります。その向こうにも、カップを置くテーブルや、ベッドのそばのスリッパがあるのでしょう。閉じた本には、今日の続きにしおりが挟まれているかもしれません。
灯台の光が、水の上をゆっくり通りました。夜に何かを求めることも、急がせることもありません。ただ、小さな明るい輪を描いて、しばらくするとまた戻ってきます。
お茶を飲み終えたころ、部屋の輪郭もやわらかくなっていました。灯台守は、灯りに静かな仕事を任せて階段を下ります。扉の石はそのままに、風は少し弱くなっていました。外では海が、ゆっくり息をしています。中では毛布が待っています。今夜は、どれもひと休みしてよいのでした。
NightWhisperのオリジナルの物語です。静かな読書のためのもので、医療上の効果を約束するものではありません。
